【院長日記】在宅での看取りについて

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在宅での看取りについて

こんにちは。院長の齊藤 航平です。
今日は、在宅での看取りについて、自分の考えを書いてみたいと思います。

これまで大学病院時代から含めて、数百人の方を看取らせていただいてきましたが、ご自宅で看取られた経験を持つご家族は、実際にはそう多くありません。
だからこそ、在宅での看取りについて話をすると、ご家族が不安に感じることがよくあります。

その理由としては、

  • そもそも在宅での看取りがどう進んでいくのかわからない
  • 病院の方が安心できて、本人の負担が少ないのではと感じる


といった気持ちがあるのだと思います。

いろいろなご家庭の看取りを支えてきて思うのは、医療や福祉の支援がきちんと入れば、在宅での看取りは十分可能だということです。

ただ、それでも最期に近づいたときに入院を選ばれるケースはあります。
その背景には、ご家族が大切な人のつらそうな姿を見ることに、心が耐えきれなくなる場面があるのだと思います。

実際、最期が近づくと、痰が増えたり、水が飲めなくなったり、体の反応が変わっていきます。
その際に行う医療対応も、例えば浮腫や痰が多い場合はあえて点滴をしなかったり、本人が嫌がるときには痰の吸引を控えたりと、普段とは逆の対応を取ることがあります。

医学的には適切な判断であっても、ご家族から見ると「何もしていない」「苦しそうに見える」と感じてしまうこともあり、それが心理的に大きな負担になるのは当然だと思います。

ただ僕の意見としては、入院することでその苦しさが劇的に変わるかというと、そうでもないことも多いです。
ご本人が「できれば自宅で過ごしたい」と思っていて、ご家族がある程度その変化を受け止められるのであれば、やはり住み慣れた自宅で過ごしてもらうことが、結果的にご本人にとっても、ご家族にとっても良い形になることがあると感じています。

もちろん、病院で看取ることが悪いわけではありません。
僕が一番伝えたいのは、

  • 在宅で最期まで過ごすことは、決して特別なことではなく、現実的な選択肢であること
  • そして、「本人とご家族にとってのちょうどいい落としどころを一緒に探す」ことが大切である、ということです。


そのためには、ご本人、ご家族、そして医療・介護のチームで、しっかりと話し合うことがとても大切だと思います。

亡くなるということに、完全な「後悔のない形」はないかもしれません。
でも、入院でも在宅でも最期まで「家族としてそばにいる」というだけで、亡くなる方にとっては何よりの贈り物になるのではと、僕は思います。

「何かしてあげたい」という気持ちがあること、
その中で悩みながら決めた選択であること、
それだけでも十分な愛情だと思っています。

本人の希望だとしても在宅看取りが絶対の“正解”というわけではないと思います。
それぞれのご家族にとっての“ちょうどよいかたち”があると思います。

迷ったときは、ぜひご家族、ケアマネジャー、そして医療者と一緒に、時間をかけて話し合ってください。
僕たちは、その過程を一緒に支えていけたらと思っています。

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