【院長日記】「訪問診療」を選んだ理由

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「訪問診療」を選んだ理由

こんにちは、齊藤です。

 クリニックのホームページや診療の中でも少しお話ししてきましたが、今日は改めて「なぜ僕が訪問診療の道を選んだのか」。クリニックの原点になった想いを、少しお伝えしたいと思います。

大学病院という「特別な場所」で

僕は以前、埼玉医科大学病院の総合診療内科で、入院中の患者さんの治療を担当していました。

 そこは、いろんな専門の先生方が集まり、まさに医療の最前線。重い病気と向き合い、命を救うために全力を尽くす日々に、大きな使命感とやりがいを感じていました。

ただ同時に、どこかで引っかかるものもありました。

 一生懸命治療しても、患者さんはまたすぐに戻ってきてしまう。ときには「帰りたい」と言われることもあります。

病院という「特別な場」で僕らは病気を診ますが、その方がどんな家で、どんな日常を過ごしているのか。そこまではなかなか知ることができないのだな、と感じていました。

忘れられない、ある日の「笑顔」

そんな中で、忘れられない出来事がありました。

 先輩の代わりに初めて訪問診療に行った時、偶然、以前に病棟で担当していた患者さんにお会いしたんです。

「お元気かな」と少しドキドキしながらお宅に伺ったのですが、その瞬間ハッとしました。そこにいたのは、入院中には見られなかった、本当に穏やかで晴れやかな笑顔の患者さんだったんです。

病気を治すことはもちろん大切。

 でも、ご自宅で安心して過ごせること、その穏やかな日常を守ることも同じくらい尊い。そう心から思えた出来事でした。

病気を「治す」こと、暮らしを「支える」こと

この経験をきっかけに、僕の医師としての考え方は大きく変わりました。

 特別な事情がない限り、多くの人が「住み慣れた家で過ごしたい」と願うのは自然なことですよね。もちろん家でより長くするために入院することが必要になることはあります。

ただ、家には病院にはない“魔法”のような力があると思います。

いつもの椅子、窓からの景色、大切なご家族の存在。そうした一つひとつが心を和ませ、ときには薬以上の力をくれることがあるんだと思います。

だから僕は、病気を「治す」ことだけでなく、その人の暮らしや人生そのものを「支える」医療を届けたいと思うようになりました。

これが僕が訪問診療を選んだ理由です。

これからも、この地域で暮らす皆さんが少しでも長く安心して自宅で過ごせるように、そのお手伝いができるクリニックでありたいと願っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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